撮影|ハードウェア編

フリッカーとローリングシャッター歪みを抑えよう

撮影ハードウェア編の第6章となります。

1.フリッカー現象

写真や動画撮影をしたら、シマシマ模様がうつりこんでしまう現象をフリッカー現象と呼びます。

主に、蛍光灯やLED照明が原因で発生します。

照明の発光原理を確認してみましょう。

日本の家庭では交流電源が使われています。

+と-が一定の周期で反転しながら繰り返される電源のことです。

この波が1秒間に繰り返す回数は、東日本なら50回、西日本なら60回です。

周波数で表すと、50Hzと60Hzです。

照明器具は、波の上端と下端でもっとも強く光り、中央の±0の地点では消灯するように点滅します。

軸と時間で挟まれた空間の面積が明るさになります。

人間は、1秒間に40回以上の点滅を認識できないため、常時発光しているように見えます。

しかし、カメラはそうではありません。

点滅による、光量変化を敏感に認識します。

例えば、シャッター速度「1/400」で蛍光灯を撮影してみます。

それを先ほどのグラフに当てはめてみましょう。

すると、撮影の開始タイミングによって、捉える光量が変化することがおわかりでしょうか。

タイミングBなら明るく撮影できますが、タイミングAなら暗い写真になってしまいます。

撮影タイミングによって写真の明るさが変わってしまう現象。これがフリッカーと呼ばれる現象です。

しかし、なぜ私たちのカメラではシマシマ模様になってしまうのでしょうか。

それには、CMOSセンサーの動作方式が関わっています。

私達が普段使っているセンサーは、CMOS方式を採用しています。

このCMOSセンサーは、シャッターボタンを押すと、上から順に画像を読み出すという特徴を持っています。

最初にもっとも上の画素が読み込まれ、次にその下、その下…と順々に読み出されます。

つまり、もっとも上にある画素の読み出しタイミングと、もっとも下の画素の読み出しタイミングが異なるのです。

先ほどの図で確認してみましょう。

写真を撮影すると、上端の画素ではタイミングA、下段の画素ではタイミングBで撮影されます。

記録のタイミングがずれるゆえに、蛍光灯の明暗差をシマシマ模様で記録してしまうのです。

2.フリッカー現象を抑えるには

フリッカー現象を抑えるには、シャッター速度を

  • 東日本:1/100・1/50・1/25…
  • 西日本:1/120・1/60・1/30…

という設定にすることが有効です。

例えば、東日本でシャッター速度を1/50や1/100にした際の図を確認してみましょう。

このように、交流電源の波長とシャッター速度を合わせると、どの記録タイミングでも光の総量は変わりません。

これは、1/2の波長(1/100)にした場合も、2倍の波長(1/25)にした場合も同様です。

波長の1/4以下(1/200や1/300)の短さになると光の総量が変化してしまう可能性があります。

このように、周波数に応じてシャッター速度を変化させることで、フリッカーを抑えることができるのです。

3.ローリングシャッター歪み

高速移動する被写体を撮影すると、斜めにゆがんでしまう現象。

これを、ローリングシャッター歪みといいます。

ローリングシャッター歪みもCMOSセンサーの読み出しタイミングが異なることで発生する現象です。

高速移動する被写体を撮影した場合、上端と下端の画素が記録するタイミングが異なります。

この線を繋ぐように記録するので、斜めに歪んだ写真となるのです。

ローリングシャッター歪みを改善するには、高速に読み出しするセンサーを搭載するか、後述するメカシャッターを使う必要があります。

4.電子シャッター

カメラには、2種類のシャッター方式があります。

「電子シャッター」と「メカシャッター」です。

電子シャッターは、センサーの記録開始と終了を電気的に制御します。

動画から、シャッターボタンを押した瞬間の静止画を切り取る方式と考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。

電子シャッター方式は、物理的な稼働部品を必要としません。

高速で連写することができるため、1秒間に60枚以上の画像を記録する様な動画撮影でよく使われる方式です。

しかし、センサーの読み出し速度が遅く、フリッカーのシマシマ模様や、ローリングシャッター歪みが目立つという欠点があります。

5.メカシャッター

メカシャッターは、電子シャッターと異なり、稼働部品が必要となります。

この様に、センサーが覆われた状態から、先幕が降り、光が当たった後に、後幕が下がります。

この方式のメリットは、高速な読み出し速度を再現できるところです。

1. 幕に覆われた状態で全電子シャッターを起動
2. メカシャッターが高速で稼働し、指定の時間センサーに光を当てる。
3. 幕に覆われた状態で全電子シャッターを終了

電子シャッターを単独で使うより、メカシャッターを併用したほうが、高速な読み出しができます。

メカシャッターを使うことで、ローリングシャッター歪みやフリッカーが目立ちにくくなります。

しかし完全に消すことはできないため、適切なシャッター速度の設定が重要です。

↓ハードウェア編まとめ

TOP